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コラム

個人資産運用情報(家族信託)

.『家族信託(1)』-信託の基本 

  • 信託の歴史

「信託」という言葉は日常ではあまり出てこないのでなじみは薄く、信託銀行や投資信託といったものを思い浮かべる人が多いと思います。そもそも信託とは財産管理のひとつの手法のことをいいます。言いかえれば「頼できる人に財産管理をす」ということです。

信託制度の歴史は古く、期限は中世ヨーロッパの十字軍の騎士が、自身の出征中の財産(領地)を信頼できる縁者に委ね、その財産から得られる利益(年貢等)を残された家族の生活を守るように給付し、帰還してきた後は再び財産を返還した制度によると言われています。

その後ヨーロッパからアメリカにわたり発展を遂げ、明治時代の後半に日本に取り入れられました。日本では信託銀行を中心とする金融機関が信託の担い手となり発展を遂げてきました。

 

.家族信託の登場

高齢化社会の到来により、個人の財産管理ニーズとしての期待が高まり、平成18年の信託法の改正により「営利を目的としない場合」の信託、つまり、個人の財産管理をするための信託が可能となりました。

信託には商事信託と民事信託があります。商事信託は信託の受託者が営利を目的として不特定多数の人から反復継続して信託を引き受ける信託をいいます。かつて、日本で発展してきた信託銀行を中心とする信託であり、信託法と信託業法の規制を受けます。一方、民事信託は特定の相手から1回だけ信託を引受ける信託を言います。この民事信託の中心にあるのが家族信託であり、自分の財産を自分の親族に管理・運用してもらい、自分の指定した者に利益を与えるというものです。商事信託に比べて個人の状況に合わせて柔軟に対応することができるため、ここ、近年、自身の意思や財産の承継するために相続で活用することが注目されています。

 

.信託の登場人物

信託の登場人物は3人です。

所有している財産を委ねる人を「委託者」、託された人を「受託者」、そして、信託された財産の収益を受け取る人を「受益者」と呼びます。この委託者と受託者が信託契約を結ぶことによって信託は成立します。財産は受託者に移って受託者が財産の名義上の所有者になるため、財産の管理や処分する権利は受託者に移転します。しかし、受託者は委託者との信託契約の内容(信託目的)に従って、受益者の利益のために管理しなければなりません。

受託者が管理した財産から収益を受け取る権利を「受益権」といいます。この受益権は分割が可能であり、分割が難しい不動産のような財産でも信託を活用することによって受益権として自由に分割することができるようになります。